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『revisions リヴィジョンズ』全話感想 信じ続ける意志の強さと運命の残酷さを描く物語

 

渋谷の街ごと未来に転送されてしまう突飛な設定。運命を信じ続ける少年と、彼に翻弄される人たち…。様々な思惑と奇想天外さがぶつかり合うアニメ『revisions リヴィジョンズ』

テレビでは毎週一話ずつ放送されていますが、Netflixでは全話が一挙配信されていた。これが睡眠時間を削ってくる作品だった。

 

全話鑑賞後の感想なのでネタバレを含みます。

 

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2017年の渋谷が舞台。

主人公の大介は10年前に300年以上の未来からやってきたミロから「とてつもない危機が訪れる、皆を守れるのは君だけだ」と告げられそれを信じて生きてきた。

友人たちに危険が迫ると後先構わず身を投げ出し、絡んできた相手を問答無用でブッ飛ばす…。相手にどんな言い分があろうと、自分が絶対的に正しいと主張する、そんなちょっと危険な人物が主人公だ。

 

2017年の渋谷が300年以上先の未来へ転送され、リヴィジョンズという謎の存在と戦いを余儀なくされていく。

その中でリヴィジョンズに対抗できる唯一の兵器「ストリング・パペット」を大介が初めて操り、これが10年前に告げられた自分の運命、つまり皆を守る力だと確信していく。

 

渋谷が未来に飛ばされる以前から彼は「自分が皆を守る」と語り、例え相手が間違った行いをしていなくても鉄拳制裁を喰らわせてしまう。そんなクズっぷりが光る男が主人公というのだから、この作品は異質というしかない。

こんなクズっぷりが延々と続く。それが彼を構成する要素なのだからある意味では個性的なキャラ造型といえるかもしれない。

 

自己中心的な性格ゆえに不快で視聴するごとにとんでもなくストレスがたまる…、ということは意外にもない。その自己中心さが彼の自信そのものに通じているので、クズっぷりがクセになるほどだ。とことん突き抜けてくれ!と願うほど、個性が際立っている。

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リヴィジョンズに対抗できるパペットを操れるのは5人の少年少女だけ。大人も子どもも全員彼らに頼るしかない。未来世界で2017年渋谷側に付きリヴィジョンズと敵対する組織”アーヴ”も敵を殲滅するほどの戦力は持っていない。

大人たちは少年少女に頼るしかないのだ。

だから大介は「これが守る力」だと信じぬく。彼の意志は猪突猛進だ。意志の強さこそが彼を戦いに駆り立てる。彼は自分の運命を信じ続けるのだが他のメンバーは苦悩し、彼らが倒してきた敵の正体を知ったときには涙を流して立ち止まる。

 

大介は強大な意志を持つ。何の迷いも悩みもなく突き進む。これが小中学生や大人だったら違和感しかないキャラになっていただろう。高校生だからこそ絶妙なリアリティを醸していると思えた。

大学への進学か就職か、未来が徐々に見え始めた時期だがそれでも輝かしいものがあると信じ抜けるのが高校生だろう。

大介は自己中心ながらも等身大の高校生に描かれていると感じる。

 

さて、肝心の物語は渋谷の街全体が300年後の未来へと転送される。漂流教室の規模をさらに拡大した作品と言える。

人や学校と言った小規模な未来転送ではなく街そのものが転送される壮大な設定だ。

 

漂流教室〔文庫版〕(1) (小学館文庫)

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  • 発売日: 2014/12/15
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この手の作品にありがちなのは作劇が主人公の周囲数メートルの範囲でしか描かれない事だ。

だが、リヴィジョンズでは渋谷区行政と法執行機関の動きを描いており、政治的な駆け引きも行われる。どことなく「シン・ゴジラ」を彷彿とさせる現実味が存在している。

単純なタイムスリップSFとして片づけるのではなく、政治面も描くことで物語に深みを与えているのだ。

 

シン・ゴジラ

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しかし、行政や法執行機関はあれども自衛隊は渋谷に駐屯地を置いていないため未来世界に転送されてこなかった。

警察の装備ではリヴィジョンズに対抗できない。対抗できるのは大介ら5人の少年少女が操るストリング・パペットのみだ。

全ての運命を少年少女に託さなければならない極限状態は現代の日本社会へ通じるものを感じてしまう。

現実の日本社会には解決できていない問題が山積している。先行きの見えない閉塞した社会を打破できるのは若者だけだという製作陣のメッセージが垣間見える。

大介が自分の未来を信じ続けているのも「未来に希望を」というメッセージが込められているのかもしれない。

 

日本ではレールの上を歩かなければ人並の生活を送ることができないと言われてきた。大学(高校)を出たら即就職し、一つの会社で定年を迎えることは当たり前とされてきた。近年はその意識も改められてきたが、まだまだ根深くはびこっているのも事実。

 

閉塞感のある社会で生きたいように生きる

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レジスタンス組織"アーヴ"は未来予測で大介が渋谷を守る重要人物だと判断していた。

しかし、未来予測そのものが間違っており大介は重要人物ではなかったと判明する。

 

この未来予測はまさにレールと言える。

ミロはアーヴの指示と未来予測が全ての正解だと信じ続けている。ミロは現代日本社会の人々に根強く残る思想と何ら変わらないものを持っているのだ。

そしてミロから託された「危機から皆を守れるのは大介だけ」との予言を信じ続けた大介もまたレールの上を進んでいるだけにも見える。

 

だが大介は未来予測が示した重要人物ではないと理解した時、彼は初めて挫折を味わう。

まさにレールから外れてしまった状態だ。どうすれば良いのか分からなくなった彼はそれでも前に進むことを決意する。

 

今まで未来を信じ続けてきた。もう戻れないところまで来ている。だからこそ進むしかないのだ。彼は正しいと思っていたことが過ちだと判明する残酷な運命に抗い、戦うことを続ける。

 

彼が運命を信じてパペットに乗り込まなければ犠牲者が増加していたことは事実。彼の性格のおかげでチームは一向に纏まらないのですが、それでも仲間を動かす原動力となり渋谷を守り勝利を勝ち取った事実は揺るがず、運命を信じ続けたことで誤った未来予測すらをも正してしまう。

 

運命と言う物は例え予測されていても常に変動する不確定なものであり、人の心を容易く傷つけることが出来る。

そんな残酷な運命を信じ続けることは時に未来すらも捻じ曲げてしまう。

だが強い意志さえあれば過ちすらも正せてしまうかもしれない。

 

例え世界が間違いだと示しても時には貫き通す大切さと運命の残酷さを描いたのがリヴィジョンズなのだ。

日本の若者に運命は残酷だが強い意志を持っていれば抗うことが出来るとメッセージを送りこんでいるのだ。

 

未来は決まっているようにみえて決まっていない。

予測されていようとも、未来は自分自身で決めることが出来る。

 

大介とおなじ高校生が見ればこの閉塞した現代社会をどうにかして打破してやろうという気持ちになれるだろう。

意志を強く持ち貫く大切さを教えてくれる教育的な作品とも言える。

 

練りこまれた設定と滑らかなCG、政治的な駆け引きも楽しめる高度な作品。

日本アニメも傑作を連続して輩出できるとはまだまだ期待が持てる。

物語も綺麗に片が付き疑問に感じる点もかなり少ないのが非常に素晴らしい。

テレビでもNetflixでも良いので是非鑑賞してほしい作品だ。

 

  

revisions 時間SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA)

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