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『カメラを止めるな!』ネタバレ感想 衝撃!完全にやられた!見事な構成に拍手!

 

たった300万円で製作された『カメラを止めるな!』

口コミが広がり東京都内の2館だけで上映される予定がいつの間にか全国に感染が拡大したゾンビ映画です。

 

ようやく鑑賞できたのですがやはり評判通り良かった!こうくるのか!と完全にやられてしまいました。

 

まだ『カメラを止めるな!』を鑑賞していない人はすぐにブラウザを閉じてください。

この作品は事前情報なしに鑑賞するのが良いです!

 

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作品情報

俳優や監督を養成する専門学校「ENBUゼミナール」ワークショップの「シネマプロジェクト」第7弾として製作された作品。

監督は上田慎一郎。

 

「37分ぶっ続けワンカットでゾンビ映画を撮影する」人々を描いています。

 

ゆうばり国政映画祭で観客賞を受賞し、カナダ、ブラジルなど海外の映画祭でも高い評価を得ており、日本では東京都内の2館でのみ上映される予定が話題が話題を呼び全国に感染が拡大中。

名古屋や大阪、福岡や札幌、沖縄にまで波及しています。

 

全国の上映館は公式サイトを参照ください。劇場により公開日が異なっているので注意が必要です。


あらすじ

ある人々は山奥の廃墟で37分ワンカットのゾンビ映画を撮影していた。

クライマックスシーンの撮影で監督が激怒してしまい、一旦撮影が中断されてしまう。

 

休憩中に、廃墟に関する都市伝説が語られた。

ここでは旧日本軍が死者を復活させる実験を行っていたという。

 

都市伝説に震えあがる若者たち。恐怖に震えながら撮影の準備を続けていると、本物のゾンビが現れた。

携帯も圏外で助けを呼ぶことが出来ない。果たして彼らは生き残ることが出来るのか?

 

感想(ネタバレあり)

完全にやられてしまった…

37分ワンカットで撮影されたゾンビ映画。96分あるにも関わらず口コミ(SNS等)では37分ワンカットのシーンばかり語られています。

 

これほど話題になっているのだからそのワンカットがとんでもなく凄いものなのだろうと考えていました。

 

しかし、期待は裏切られます。

37分ワンカットのゾンビシーンは本当にチープです。ゾンビはただの顔色の悪い人にしか見えず、低予算ゆえのダメな作品にしか見えません。

「これが本当に話題作なの?なぜ?」という疑問が頭の中に浮かんでしまうほどでした。

所々に変な場面があり、出演者の演技もおかしい。何がしたいのかイマイチ分からない言動が目立ち違和感が募っていきます。

 

ですが、期待がまたしても裏切られてしまうのです。

真実が分かった瞬間に「クソ!なんてことだ!やられてしまった!」と膝から崩れ落ちるほどの衝撃が走りました。

随所にちりばめられた違和感すらも第二部に続く伏線。なんてこった、こんなうまい伏線回収方法があったのか!と愕然とするほどでした。

 

「だから皆ワンカットのチープゾンビシーンしか語らないのか!」と納得させられてしまい、負の感想を抱いたことに対して謝りたいほどでした。

 

これほどまでに斬新かつ、徹底された序破急があるのか!とワンカットを終えた瞬間から驚嘆しっぱなし。

まさにやられた!と言うしかない構造なのです!

 

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計算された序破急構造

この作品はドがつくほどの三幕構成。

日本的には序破急

という言葉がありますが、本作はそれにぴったりと当てはまる作品なのです。

 

まず序がワンカットのゾンビシーンです。

序は観客を惹きこむ要素が必要とされているようですが、本作の序は違和感だらけ。チープさという普通ならば使わない悪手にも思わる手法で観客の引っかかりを覚えさせるんですよね。

 

その引っかかりを抱えたまま破に移行するのです。

破では一か月前に話が戻り、ワンカットのゾンビシーンが実は作り物と判明します。本物のゾンビなんて存在せず、全てはテレビ局の仕掛けた開局記念番組だったとネタバラシ。第二部の開始です。

 

序部分とは大幅に異なった雰囲気のドラマが展開されます。まるで別作品に思えるほど、空気ががらりと一変します。

破の部分ではどのようにしてゾンビ映画が撮影されるに至ったかを描いており、ここで緩やかに作品が盛り上がってきます。

 

ゾンビ映画はゾンビ専門テレビ局の開局記念番組であり、全てワンカットかつ生中継というとんでもない企画だと判明。これがゾンビシーンで起きた様々なイベントに繋がることになるのです。

しかし、ここでもまだ退屈に思える要素が続きます。またしても引っかかりを覚えさせるんですよね。

撮影前の顔合わせで出演者が一癖も二癖もある人物ばかりだと言うことが判明し、この癖がゾンビシーンに散りばめられた違和感へと繋がるのです。

 

引っかかりがさらに増えたまま、急へ移行します。

急では撮影本番が描かれます。撮影が如何に困難だったのかをドタバタ感満載で描いており、序盤の空気とは本当に異なったコメディ感満載の楽しくて笑える内容になっています。

 

非常にテンポが良く矢継ぎ早にゾンビシーンの違和感の正体が次々と発覚していくのでその快感は凄まじいものです。

あのシーンではああいうことがあったのか!だからこうなってしまったのか!と笑いながらとんでもなく納得させられてしまう。

 

これほど巧みに伏線を次々に回収していく様はまるでミステリーの犯人とトリックが分かったときのような快楽が襲ってくるほどなんですよね。

 

チープなワンカットで見せる序、真実が分かるもまだ違和感を与えてくる破、全ての真実が発覚し怒涛の笑いが押し寄せてくる急。

計算されつくした序破急構成。映画のお手本とも言うべき見事さ。やられた!と思ったらまたやられてしまう。驚愕で観客に襲い掛かる作品なのです。

 

そりゃ話題にもなるよねと納得するしかない、というより納得させられるというべきでしょうか。

本当に上手いんですよね。低予算のインディーズでここまで完璧な構成を見せちゃうのか、と参りました。

 

 

凄い!でも…?

本作は超低予算で作られたインディーズ作品ですが、一般の商業映画にも劣らないキャストやスタッフの凄まじい情熱を見せてくれます。

 

構成も非常に上手く、驚愕の連続なのですが中盤のテンポが少し緩慢だったかな?と感じました。

 

しかし、それを差し置いても後半の襲い掛かる笑いの波に抗うことは出来ません。劇場が笑いに包まれ、楽しい気持ちで帰らせてくれます。

超低予算でもここまで出来るのか、と驚嘆させられ映画の可能性を感じました。

 

巧妙なほどに散りばめられた伏線、そして回収。快楽が突き抜けた作品。まさに必見なのです!