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『モンガに散る』感想 台湾暗黒社会が見えてくる青春群像劇の傑作!

モンガに散る (字幕版)

台湾映画『モンガに散る』を見た。モンガとは台湾の歓楽街を意味するようだ。
今更だが鑑賞してみたところこれがとてつもなく面白かった。

転校早々不良に目をつけられた主人公モスキートが弁当の「鶏もも肉の照り焼き」を奪われてしまい、それを取り返したことから台湾極道社会への身を落とすという風変わりな始まり方。

 

ずっと友達が出来なかったモスキートは不良たちに果敢に挑む姿を認められ校内を仕切る極道の息子ドラゴンの仲間になる。モスキートは初めてできた友達との青春に身を落とし、そして極道と言う暗黒の世界へとのめりこんでいく。

 

極道映画なのに青春の要素が色濃く、馬鹿もあれば色恋沙汰もある。そんな青春極道映画と言う内容だ。共に喧嘩をし風俗に行き酒を飲み交わし夢を語り合う…。そんな青春の一ページが随所に詰め込まれていて極道映画のはずなのに「こんな青春を送りかかった」と追憶したくなってしまう。

 

登場人物は見な極道と言う悪人なのだが、どこか憎めいない。日本の極道映画にありがちな粗暴な感じはほとんどなく人間味にあふれている。悪党たちではあるが心のどこかに人間性を保っているというのを描きたかったのだろう。どこか忘れていた人情と言う物にあふれた作品だ。

極道になるために山にこもり長刀や刀を使ってトレーニングを行うシーンはどこかスポ根的にも見えてくる。様々なジャンルを貪欲に取りこんでいるのだ。

 

そんな彼らが本物の極道になったとたんに物語は暗く悲しい方向へと動き始める。モンガを守るためにはどうすればいいのか、様々な極道たちの謀略が渦巻き始め凄惨さを見せ始める。

 

前半の青春的な快活さは鳴りを潜め極道らしい暗黒さに物語は支配されていく。

 

仲間同士が裏切りはじめ遂には殺し合いまで発展してしまうのだ。

しかし仲間を思うからこそ躊躇してしまう。青春を共にした記憶が彼らを完璧な極道にすることを阻むという皮肉な展開が訪れる。

 

前半は明るく後半は暗く重い展開を迎える。違和感なくスムーズに移行させているのだからこの映画は本当に凄い。

 

 

そんなモンガに散るの最大の魅力は儚い人間ドラマだ。かつてあれほどまでに強固な絆で結ばれていた仲間たち。それがどうして血をみることになったのか…。

 

これはただの極道映画ではなく青春映画なのだ。人間の大切なものに迫った迫真の人間ドラマが展開される。

 

この映画は台湾の暗黒社会と歓楽街の真相を見ることが出来る一種の記録映画的側面を持っている。

日本と同じくミスをしたものは指を詰めるし、抗争で大けがを追うこともある。みかじめ料もあればシマ争いもある。日本の極道とほとんど変わりないのだ。出所祝いもしっかりと存在していて台湾映画なのに日本の極道映画を観ているような気がしてくる。

 

様々なジャンルを貪欲に取り込んだ『モンガに散る』はまさに傑作と呼べる極道青春映画なのだ。