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『SSSS.GRIDMAN』 現代アニメ文脈で復活したグリッドマンはリバイバルの希望となるか?

1993年にテレビ放送された『電光超人グリッドマン』が2018年にまさかの大復活を果たしました。

『SSSS.GRIDMAN』が特撮ファンのみならずアニメファンをも虜にし一大ムーブメントを巻き起こしています。

 

知る人ぞ知る存在だったグリッドマンがなぜ大人気になったのか。そしてグリッドマンは希望になるのか?考えてみます。

 

 

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現代アニメ文脈への見事な落とし込み

グリッドマンが人気を得た理由は現代アニメ文脈への落とし込みが完璧だったというべきでしょう。

 

元は特撮ヒーローだった存在ですが、コンピューター内にグリッドマンが存在し主人公と合体し怪獣と戦い、敵もコンピューター内に存在し怪獣を作るという基本設定は踏襲しつつも物語は大胆にアレンジされています。 

原典へリスペクトを感じさせつつも、キャラクター設定やデザイン、世界観を現代のアニメらしさを押し出す。

この無理難題に見える要素が見事に絡まりあった奇跡とも呼べる結果が大人気を得るに至ったと思います。

 

そして物語も謎が多い点もアニメファンの心を刺激しているのではないのかと考えます。

アニメファンは考察を好む人も多く、第四話時点では謎はほとんど明らかになっていません。

グリッドマンがなぜジャンクにいるのか、新世紀中学生の存在や裕太の記憶喪失、アカネとアレクシスの関係と思考などなど様々な謎が存在しています。

 

その謎こそがアニメファンの好奇を引き寄せている主たる要因だと思います。

ネット上で考察が飛び交うことで言論が活発になり人々がグリッドマンの存在を目にする機会が増え、そして新たな視聴者を増やしていく好循環が生まれているように思えます。

 

作劇も意外とスローテンポなのですが、物語構成が巧みなので30分番組としては中だるみもなければ駆け足感もない見事な塩梅になってます。これが長編映画だと恐らくテンポが悪いなどと批判が噴出していたことでしょう。

アニメグリッドマンは30分と言う限られた尺を上手く使っているんですよね。

短すぎず長すぎない、そして不可思議な世界観のように人々を惑わせるスローテンポが好奇心を刺激しまくるのです。

 

『SSSS.GRIDMAN』は現代アニメ文脈における謎やテンポの使い方が巧みであり、特撮側に寄せず躊躇なくアニメ側へ振り切ることによって、実写作品のアニメ版にありがちな中途半端さをかき消すことに成功しているのです。

 

アニメで特撮をしているとの声も聴かれますが、グリッドマンは完全にアニメに振り切っていると言えるでしょう。作劇の文法が実写ではなくアニメになっているからです。

ですが戦闘シーンなどは特撮っぽさを残すことで特撮ファンの心も逃さない。

アニメファンか特撮ファンのどちからに媚びるのではなく純粋に良い作品を作ろうとした結果なのでしょう。

 

それが喧嘩しそうな両ファンを取り込むことに成功したと思います。

 

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グリッドマンは希望になるのか?

これまでも懐かしの作品が現代に復活することはありました。

しかし、どれもグリッドマンのようなムーブメントを巻き起こすには至らず原作ファンからは嘆きの声すら聞こえる物もありました。

 

ですがグリッドマンは特撮テレビシリーズの放送から25年が経過したのにも関わらず、アニメ化で高い人気を獲得し特撮版の再評価にもつながるという奇跡を見せています。

 

グリッドマンが成功したのは原典をリスペクトしつつもアニメへと振り切った点でしょう。

これまでの作品はどれも振り切っていなかったのでは。

中途半端に原作をなぞっていたり、キャラクターや物語を適当に思える改変をしてしまうなど「何か違う」印象を与えてしまうことが多かったのでは。

 

しかし、グリッドマンは振り切っています。基本設定は残しつつも物語世界観と大きく異なっています。

ですが根底から漂う香りはグリッドマンそのものであり製作陣の強烈なリスペクトを感じます。

リスペクトしながら振り切る。この高度な決断が成功の理由でしょう。

 

グリッドマンが成功したことで今後過去の作品が復活する機会が増えると思います。

この成功は奇跡です。だからこそグリッドマンは希望になるとは思えないのです。

 

成功するには現代に沿った作品を作る必要があります。

古めかしい倫理観や世界観などはかなぐり捨て、だが原作はリスペクトする。そのような高度な技術がなければ現代で成功しないのではないのでしょうか。

 

過去作が復活する可能性を示したのは希望と言えるかもしれません。

しかし成功は約束されていないのです。

 

現代で成功するには何が必要なのか。『SSSS.GRIDMAN』はそれを示しました。そういう意味では希望の存在なのかもしれません。