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『孤狼の血』ネタバレ感想 東映の本気を見せてくれるヤクザ映画の新たな傑作!

東映が久々に本気のヤクザ映画を送り出してきました。生易しくなった邦画に喝を入れるかのような過激な描写の数々。実録路線を思い起こさせるヤクザ映画が出てきました。ヤクザ映画完全復活といってもいい傑作です!

 

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昭和63年の広島県呉原市では加古村組と尾谷組の抗争がくすぶっている状況。加古村組系のサラ金社員が失踪しその捜索に大上刑事と若手の日岡刑事があたる。大上は尾谷組と癒着関係にある悪徳刑事だったというあらすじ。

 

この作品は実録路線を彷彿とさせるギラギラした熱気に包まれています。

仁義なき戦い県警対組織暴力、北陸代理戦争といった往年の東映ヤクザ映画を彷彿とさせるとんでもない作品です。ナレーションがあるのも実録路線っぽさがあってよかったです。

 

この21世紀にこれほどまでに実録路線全盛期を思い起こさせる作品が見られるとは思ってもおらず終始興奮しっぱなしでした。東映は本気で実録路線的な作品を復活させようとしているんだと思いましたね。

 

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作品のテーマはずばり「正義とは何なのか」です。

役所広司演じる大上刑事はカタギを守るためにヤクザと癒着している。ヤクザと癒着することで抗争への発展を防ぐことで市民の平和を守ろうとしている。しかし、松坂桃李演じる日岡刑事はヤクザと癒着することが正義とは思えないと考えています。

 

ヤクザと癒着することで抗争を防ぎ市民を守れるならそれも正義と言えるでしょう。ですが悪と癒着することは正義とは言えないはずです。

 

対して日岡刑事のように悪の組織と癒着することは正義とは呼べないというのも正しい考えです。

正義とは果たして何なのか。治安を守るためなら何をしてもいいのか。一体正義とはどこにありどのような形なのか。正義とは一体何なのか。この作品は正義が何なのかを直球に問いかけているのです。

 

正義問答とも言うべき作品でヤクザとの癒着により治安を守るという行動が「県警対組織暴力」を彷彿とさせます。ヤクザ映画で正義を問いかける。ヤクザ映画のテーマとしてはオーソドックスかもしれませんが役者陣の演技も凄まじい迫力で、鑑賞後は正義について考えてしまうことでしょう。

 

特に役所広司の演技は凄まじいもので呉で生まれ育ったかのように流ちょうな呉弁を操ります。そのおかげか物語の迫真さが大きく増しているのです。雰囲気も悪徳警官らしさがムンムンで県警対組織暴力菅原文太が蘇ったかのような感覚に陥りました。

 

若手刑事日岡を演じた松坂桃李の演技も凄い。大上に振り回されてどんどんとやさぐれていく過程を上手く演じきっていて最初と最後では別人のような表情を見せてくれます。

 

役者陣の演技の濃さが往年の実録路線を想起させてくれる要因にもなっています松坂桃李は本当に素晴らしい役者に育ったんだとこの作品で実感させられました。

これまではタダのアイドル的色男な印象だったのですが、この作品でその印象な完全に払拭されました。それほど演技に鬼気迫る迫真さがあったんですよ。凄まじいですよこれは。

 

『弧狼の血』は21世紀に蘇った東映実録路線と言える作品です。バイオレンス描写も凄まじく血しぶきなんてもはや普通、指を切り落としてしまう場面もありこれぞヤクザのやり口だと言わんばかりの凄惨な拷問シーンも出てきます。豚の糞を口に押し入れられる場面は目を背けたくなるほどです。

 

 脚本と役者の演技、バイオレンス描写、どれ一つ文句のつけようがない作品。東映が久々に本気のヤクザ映画を送り出してくれました。何一つ文句がつけられない東映の本気。

 

これを見ると他のヤクザ映画が見たくなるでしょうし、東映にはかつてのようなギラついたヤクザ映画をもっと量産してほしいと願ってしまいたくなります。仁義なき戦いを直撃した世代を追憶できる作品です。

 

孤狼の血

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