『犬ヶ島』ネタバレ感想 子どもも楽しめる政治闘争映画だった!
『グランド・ブタペスト・ホテル』などで知られるウェス・アンダーソン監督によるストップモーションアニメ映画『犬ヶ島』が公開。膨大な日数がかかるストップモーションアニメと言うことで期待していました。
一見すると子ども向けに見えるような作品ですがこれが政治的な側面を持ち合わせた内容で大傑作でした!
作品紹介・あらすじ
今から20年後の日本ウニ県メガ崎市ではドッグ病(犬インフルエンザ)が蔓延し人間への感染が危惧されていた。感染拡大を恐れた市長の小林は市内全ての犬をゴミ島へと隔離する。市長の養子である少年アタリは自身の護衛犬スポッツを探すためにゴミ島へと降り立つ。
日本からは渡辺謙、RADWIMPSの野田洋次郎や夏木マリなどが参加しベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞。
圧倒的な情報量と緻密なアニメーション
ストップモーションアニメは静止している物を一コマごとに撮影していくという途方もない時間のかかる手法です。
人間の肌の質感、犬や猫の毛並みまで緻密に再現していて実写と見紛うほどの出来栄えです。
毛並みが風になびいたり、喧嘩の場面は一体どうやって撮影しているだろう?と思うほど。手描きアニメーション的な表現をストップモーションで再現するなんて凄まじい労力だと思います。メイキングがかなり気になってしまいましたね。
本作はハリウッド映画で見られる勘違い日本をあえて再現しているようで、画面の隅々に突っ込みどころがあります。寿司のわさびを塗る順番が変だったり、高校の演劇部なのに歌舞伎っぽい演目をやっていたりと面白おかしい場面が満載。心の中で突っ込みながら見ることが出来るのもこの作品の楽しみと言えるでしょうね。
キャラクターも実写のような生き生きとした活力を感じさせてくれ、涙を流すシーンもあり感情の起伏一つ一つを丁寧に描いています。本当に細かく情報量が多くて瞬きが許されないほどです。
細部にまでとことんこだわっていて妥協を一切感じない。あまりにも細かすぎて言葉を失うほどです…。
子どもも楽しめる政治映画
犬ヶ島という名前は日本人からすると鬼ヶ島を連想してしまうはずです。
しかし犬を倒しに行くのではなく少年アタリと犬の冒険を描いた作品になっています。桃太郎的な作品ではないんですよね。
遥か昔、まだ侍がいた時代の話。部族対立が発生し小林一族は猫を従えていましたが他の部族は犬を従えていました。争いの末、少年の侍が小林一族は打倒。小林一族はその恨みを忘れることなく今日まで生き延びメガ崎市の巨大財閥として返り咲きます。市長となった小林はドッグ病の感染拡大を防ぐという口実を使い犬たちをゴミ島へと流刑させます。
小林市長の犬追放政策に疑問を持った犬愛護派の高校生の交換留学生で新聞部トレイシーの調査で追放が陰謀なのではないかという疑問を抱きます。
小林市長はヤクザなどを使いドッグ病を蔓延させており、ドッグ病の治療薬を開発した研究者を毒殺までしてしまう…。
政治家の黒い人脈と陰謀、それに対峙する高校生たち。高校生たちが犬愛護のプラカードや鉢巻をし、市長選に抗議する場面もあり政治的な印象をより強めています。
一見すると子ども向けに見える作品なのですが、かなり政治的な色合いが濃いんですよね。
終盤には犬追放派と犬擁護派の政治闘争劇が盛り込まれていて大人向けの雰囲気が増しています。
犬を守るか抹殺するかで意見が真っ二つに割れ、乱闘が起きる場面は政治の混乱を彷彿とさせます。乱闘をコミカルに描いているのは政治風刺のように感じられました。
乱闘の後、犬たちは救われます。犬も猫もみんな仲良く生きていこうというメッセージもありきちんと教育性も持たせているんですよね。
緻密なストップモーションで生き生きとしたキャラクター達を見せてくれただけで大満足なのに、政治性や教育性も盛り込んでいるとは驚きの連続でした。
子どもも楽しめる『犬ヶ島』は単なるエンタメ作品ではない深く考えさせられる作品です。
犬たちが可愛いのでそれだけでも見る価値ありです!
- アーティスト: サントラ,Seiichi Ida,Tasuku Sano,ビル・フィネガン
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2018/05/23
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