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『広島カープ誕生物語』感想 カープの歴史とファンの狂騒を描いた歴史的一冊

中沢啓治著作集 1 広島カープ誕生物語

強さを見せている広島カープ。その黎明期を描いた歴史的名著を読みました。

カープファンの熱すぎる愛に笑いと涙が溢れる大傑作漫画です!

終戦直後の広島で野球に打ち込む少年たちの視点から広島カープの誕生から初優勝までを描く史実に基づいたフィクション漫画。作者は「はだしのゲン」で有名な中沢啓治です。

 

終戦直後の広島で野球を愛する少年たちは進駐軍と賭け野球をして生計を立てていました。その頃の日本には多数のプロ野球チームが存在していましたが少年たちは広島にプロ野球チームがないことに嘆いていました。

 

そんな折、広島カープが誕生すると知り歓喜に沸く少年たち。しかし広島カープの実情は酷い有様。この作品では発足当時の広島カープの実情を徹底的に描いています。

予定していた資金調達が上手くいかずユニフォームを選手分そろえることも出来ずまともな宿舎もないプロ野球チームとは言い難い貧乏球団。給料すらまともに支払うことが出来ない状態で優勝には程遠い存在でした。

 

ユニフォームが破れたままファンからカンパを募る場面もあり当時は相当に酷い有様だったことを知ることが出来ます。

 

そしてカープファンの愛が見所です。

カープファンが他球団の優秀な選手をカープに入団させるために選手の自宅前に座り込んだり、審判の判断に激怒して暴徒化する場面が出てきます。

審判を「しごうしたる」とリンチしようとする場面なんか誰が描けるのでしょうか。あまりにもやりすぎで笑えてくるほどです。

 

他にもカープが勝利すると豆腐を無料で配り始める豆腐屋やタダで試合を見ようと便所から侵入を試みるファンがいたりと愛を通り越した狂騒を見ることが出来ます。いくら何でもやりすぎでしょと思うほどにファンの愛情を美化することなく史実に基づいて徹底的にリアルに描いているのです。

 

この作品はカープの歴史とファンの歴史を同時に知ることができ、カープがどれほど愛されているのかがよくわかります。敗戦で打ちのめされた広島がこれほど活気づいたのもカープのおかげ。カープが負け続けると愛ゆえに暴言を吐いてしまうシーンまで出てきてしまいます。

 

本当に凄まじい作品です。

ファンの愛と球団の歴史を歪曲することなく描いているからこそ読んでいくにつれて自身の中でもカープへの愛が芽生えてきそうな感覚が発生してくるほどでした。

 

カープファンでなくても楽しめる作品です。

何度も言いますがこの作品はカープとファンを美化した作品ではありません。史実に基づき暴徒化や暴言、球団の貧乏っぷりまで徹底的に描いています。だからこそ面白いのですよ。美化や歪曲がないからこそ広島県人にとってカープがどれほど特別な存在であるのかを知ることが出来ます。

 

史実に脚色は含まれていますがカープの歴史書と言うべき内容です。初優勝は涙無くして読むことができないほどです。愛が凄まじすぎる傑作漫画です。

 

 

中沢啓治著作集 1 広島カープ誕生物語

中沢啓治著作集 1 広島カープ誕生物語