エーデフェンス

エンタメのレビュー&情報ブログ

『リズと青い鳥』で示した京都アニメーションの凄さとは何なのか?

f:id:edfencejirto:20180425200443j:plain

 (C)武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会

 

様々な名作を世に送り出してきた『京都アニメーション

見れば必ず衝撃に打ちひしがれる『リズと青い鳥』も京アニ作品だ。改めて京アニは凄まじいスタジオだと実感させられた。

続編なのに「一つの作品」を生み出した

リズと青い鳥』でまず語らねばならないのは「一つの作品として完成」されている点だ。

 

これまでのテレビアニメ、ドラマの劇場版は総集編や続編となるものが多く、ほとんどがテレビシリーズを視聴していなければキャラクターの関係性が分からない事も多く劇場版から視聴する観客はついていけない事も多かった。

 

京アニもかつては同じ轍を踏んでいたこともあるがリズと青い鳥』は『響け!ユーフォニアム』シリーズの続編であるのにテレビシリーズを視聴していなくても受容できる作りになっている。

 

物語を平凡な日常を描くだけにとどめ、物語の軸も『鎧塚みぞれ」と『傘木希美』の二人だけに絞ることで無駄な情報が入り込む余地をなくした。

それが功を奏しある種テレビシリーズとは断絶と思わせられる物語が生まれたのだ。

 

本作は続編でありながらテレビシリーズの視聴を前提としていない作りになっているため、初めての観客もすんなりと心に受け入れられることになるのだ。

 

主軸を移し、尚且つテレビシリーズのキャラクターを大きく絡ませなかった点は新規の視聴者を生み出せシリーズに新たな風を吹かせることになる。この英断はユーフォニアムシリーズの大きな転換点と言えるはずだ。

 

続編でありながらも映画で完結する「一つの作品」を生み出したことが京アニの凄まじい点だと考えている。

 

無駄のない緻密な情報量

この作品はキャラクターがあまりにも多くを語らない。キャラクターの心情は表情や息遣い、風景で描かれる。

心情を察せという投げやりな作風ではなく、90分の全ての映像にキャラクターの心情が全て描かれているのだ。

 

京アニの緻密な情報量は『リズと青い鳥』だけではなくこれまでの作品でも描かれてきた。

直近ではテレビアニメシリーズ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も似たような作風だ。

こちらも画面の至る所にキャラクターの心理を反映させ観客を深い世界へと連れて行った。

 

京アニは緻密な情報量を映像に落とし込むことにより1秒たりとも無駄のない作品を生み出した。

 

映像だけではなく音でキャラクターの心情を描き、キャラクターに多くを語らせず映像で心情を表現するのは無声映画にも通じる無駄のなさを感じさせる。

 

映像は発声が当たり前の時代にキャラクターに多くを語らせないという時代を逆行するかのような仕様には驚嘆させられるばかりだ。

映像と音でキャラクターの心情をしっかりと示すというのは京アニが誇る緻密な作画力と音響へのこだわりが成せる技だと考える。

 

時代を逆行するかのような作風で時代の最先端を行く京アニは一体どこまで私たちを連れていってくれるのだろうか。

 

アニメーションにしか成しえない表現を極めている

リズと青い鳥』はこれまでの京アニとは違った静寂に包まれた作品である。

 

髪の毛一本にすら意味を持たせ、映像とシンクロした完璧な音響表現、幻想的な光の使い方は実写で再現不可能な表現だろう。アニメーションだから成しえた表現だと思える。

指先の動き、声優の息遣い、画面に描かれる全てが実写では成しえることが出来ない表現に満ち溢れており、まるで見る文学のような感覚を与えるほどだ。

 

そしてアニメーションなのに無駄に動かず、静謐とした作品に仕上げ緊張感を高めているのも凄まじい。

 

アニメだから動きを与える必要はないのだと示したように感じた。

京アニは『リズと青い鳥』でアニメーションの新たな境地へとたどり着いたのかもしれない。

 

進化が止まらないスタジオ

京都アニメーション萌えアニメを手がけ『リズと青い鳥』のような静謐で繊細な文学を感じさせる作品をも手掛けてしまう。隙の無いスタジオがとうとう文学的な作品を生み出してしまった。

 

アニメーションはただの絵ではなく全てのシーンに表現者の意図が存在していることを改めて白日の下に晒してくれた。

様々なジャンルに貪欲へ挑戦し新たな表現を模索する京都アニメーションはアニメーションの新たな可能性を示しながらこれからも進化を止めることはないだろう。

 

それほどまでに『リズと青い鳥』は凄まじい作品であり言葉にすることが難しい。

京都アニメーションは作品を生み出すごとに進化を続けている凄まじいスタジオなのだ。